ドクター's ボイス

2016年春・今年のインフルエンザの総括

2016年04月26日

この原稿を書いている4月末の時点で、今日一日で5人のインフルエンザ患者さんが来られました。全員B型インフルエンザです。一時ほどの流行はないにしても、まだ患者が一人もいなくなったわけではありません。5人のうち2人は、先週わたしがB型インフルエンザと診断した男の子の、お母さんと妹さんです。
真夏でもインフルエンザは発病しうるのです。思い出して下さい。2009年、神戸の高校でバレーボール部員から見つかって、日本中で大流行した新型インフルエンザのことを。あれ、ゴールデンウィークの明けた5月中旬の出来事だったんですよ。

と言うわけで、まだ収束したとは言えないのですが、現時点で今シーズンの傾向を総括してみますと、まず流行の始まりがが遅かった。2014年末は11月からA香港型が大流行しましたが、あれが例外で、本来は今シーズンのように、年が明けて3学期が始まる頃から流行が始まります。インフルエンザは子供が媒介する病気だと、私このコラムで何度も言ってます。ですが今年は2月に入ってからが本格的に流行のスタートでした。予防接種に関しても、私はいつも11月初旬と12月初旬の2回、受けて下さいと言ってます。ワクチンは早い人で4ヶ月、普通で半年しか効果が持続しません。4月や5月ともなると、もう、予防注射はしたんですけど、なんてのは意味がありません。2016年の年末も、やはり11月と12月の二回、受けて下さいね

今シーズンの特徴として、特にB型インフルエンザは熱が出ない、出ても37度前後、という患者さんが非常に多かった気がします。このコラムでも、今年は高熱が出ない傾向にあると何度もお伝えしたのですが、世のお母さんたちは、朝のワイドショーで何度も叫ばない限り、熱がないからインフルエンザと思わなかった、と言って手遅れの状態でお子さんを連れてくることもしばしばでした。うちのような、吹けば飛ぶよなクリニックのコラムやブログなんて、ダレも見てくれてないんですよね。
インフルエンザは時間との勝負です。症状が出て早く治療すればするほど、早くそして楽に治ります。決して自己判断しないで、正しい診断スキルを持ったドクターに相談して下さい

また今シーズンはB型が二種類、流行しました。山形株とビクトリア株だと推測されますが、実際に今年、うちのクリニックでは2週連続でB型インフルエンザに二回かかったお子さんが数名います。ちょっと可哀想でしたが、理論上は充分あり得る話です。親御さんたちは信じられないという顔をしていましたが、私が詳しく説明すると、まぁうちの子はアンラッキーだったということですね、と理解しては下さいましたけど。ただ続けてB型に二回かかった場合だと、二回目の症状は一回目の抗体が身体に残っているので軽いことが多いのです。微妙な遺伝子配列が違うだけで同じB型ですから、二回目の罹患は見逃されがちです。これも注意して頂きたい点です。

あと、これは私が声を大にしたいことなのですが、今年のインフルエンザには「イナビル」が
あまり…いや、ほとんど…いや、ぜんぜん?…効かなかったみたいです。じっさい他所のクリニックでインフルエンザと診断されて治療を受けたけど全然治らなくて、と言う患者さんがたくさん来ました。普段うちに来ている患者さんでも、インフルエンザの時はそりゃもぅ、辛いわ、しんどいわで、つい近場の医療機関に行っちゃうのは仕方ありません。でも治らないから結局うちに来る。それで私が「もしかして、イナビル、吸わされたんと違う?」…当たりです。
イナビルは一回吸入するだけで良い薬ですので、非常に使いやすいし、患者さんも楽ですが、吸入薬に慣れていない人がその一回を失敗したら、どうなると思います? 効かないのか、患者さんが失敗するのか、その辺りは断言できませんが、とにかく今年は他院でイナビル使われて治らなかった尻拭いを何度させられたことか。

インフルエンザは熱が下がったら治癒、と思ってる人が意外に多いことにも驚かされたシーズンでした。インフルエンザは平熱になってから48時間は強い感染力を持ち続けています、つまり人にうつすと言うこと。だから解熱後48時間は学校に行ってはダメなんです。そしてそれからさらに24時間、つまり解熱後72時間して、ようやく身体からウイルスがいなくなります。つまり、平熱まで熱が下がってから丸まる3日間はまだインフルエンザ患者なのです
だから熱が下がったのにまだ喉が痛いとか、咳が続くとか言ってきても、そりゃあアナタ、明日の夜まではまだ、君はインフルエンザ患者なんだもん、仕方ないよ。って、何度言ったことか、今年は特に。

以上、今シーズン、まだ患者さんは来るでしょうけど、いちおう振り返ってみて今年のインフルエンザの総括をしてみました。来シーズンと言っても、もう今年の年末ですが、予防接種は遅めに二回、これは憶えておいて下さいね、皆さん

追記: ~追悼・史上最高のロック・キーボード・プレイヤー~
「オレはリック・ウェイクマンの方が上手いと思う」と言うと、その友達はボクを鼻でせせら笑った。14の夏だった。小遣い貯めてバカ高いスコアを買い、バンド作ってコピーし、ジャズ学校に通い、勉強もせずそんなことばかりしているうちに、どちらも甲乙つけ難い宇宙人的な天才だと思い知らされるのだが、もう少し歳を取ると、あの14の夏、ヤツがボクを鼻で笑った理由が解るようになった。後にヤツはバークレーを首席で卒業し、世界的に有名なジャズ・ピアニストになるのだが、14のあの時ヤツはもう解っていたのだ、彼の狂気的なスゴさを。
今年に入って、ボクは何を思ったか、突然ネットで彼の演奏する動画を集め始めた。何故だか判らなかった。が、観れば観るほどスゴイと思った。レコードで聴いた時は多重録音だと思っていたフレーズを彼は左右の手で同時に弾いていた。40年ぶりに知る衝撃だった。その曲がオーケストレイトされて、数年前の大河ドラマで流れたことも初めて知った。
3月12日にカミさんと飯を食いながら、さいきん突然むかし好きだったミュージシャンの動画あつめて観てるけどやっぱスゴいわ、真似しようと思ったら指が攣った、と笑った。その夜、彼の訃報がインターネットを駆け巡った。偶然とは思わなかった。彼の魂が小さなカケラになって世界中に飛び散って、元キーボード小僧や、元エレクトーン少女のハートに突き刺さっただけなんだ。キース・エマーソン(Keith Emerson)至高のロック・キーボード・プレイヤー、2016年3月11日サンタモニカの自宅で死亡、享年71歳。合掌。 平成28年4月25日 松本浩彦

世間でいわれている「良くない食べ合わせ」<4>

2016年03月24日

まだまだありますよ。えっ、そんな料理あるの? というものもあれば、それって普通に付け合わせでついてるじゃん、というものもあります。実はこれらも、医学的、栄養学的に考証すると、非常に筋の通った理にかなった「良い食べ合わせ」だと言えます。
■ 柿ときな粉、
きな粉はボタモチにまぶしたり、お餅につけたりとふだんは補助的に食べている食材ですが、これはもともと大豆の粉ですので、優れた植物性タンパク質です。鉄分、カルシウム、カリウムなどを多量に含んでいます。また、柿にはビタミンCとカリウムが含まれています。この二つを食べ合わせるとどのような効果が期待できるのかというと、貧血に効くのです。貧血の多くは鉄分不足が原因です。日本人は欧米人に比べ特に鉄分の摂取量が少ないため、頻度が高い病気ですが、鉄分を効果的に補ってくれるのが「きな粉と柿」の組み合わせです。柿のビタミンCとカリウムがきな粉の鉄分の吸収をより一層高める働きをしてくれるためです。赤パブリカやレモン、オレンジなどでも同様の効果を得ることができます。
■ ニラとサバ、
ニラとサバ、組み合わせて料理するとなると難しいですが、この2つは日頃たまったストレスに対して効果的です。ニラはその匂いのせいで、中華料理で使われることが多いですが、その栄養価は素晴らしく、ニンニクやラッキョウなどと一緒に「ノビル」と呼ばれ、漢方の世界では薬として用いられていました。とくにビタミンCはストレスによく効くのですが、ニラには100グラム中25ミリグラムもビタミンCが含まれています。サバは特に消化によい優れたタンパク食品として知られており、DHAという身体に良い脂肪酸も含みます。この2つを食べ合わせることによってストレスに打ち勝つ力をつけることができます。
■ ブドウと鶏肉、
ブドウと鶏肉の煮込み、ちょっと想像できませんが、じつはイスラエルの代表的な家庭料理です。中東諸国では大変よく効くスタミナ料理として有名です。ブドウはその昔、ヨーロッパでは『ブドウ療法』なるものがあったほど身体に良いとされています。ブドウには消化を助ける酒石酸やクエン酸といった有機酸、豊富なビタミンにミネラルのほか、多くのポリフェノールも含まれています。鶏肉はグルタミン酸やメオニチンといった必須アミノ酸をたくさん含んだ良質のタンパク食品であるとともに、亜鉛などのミネラルも豊富で、この2つを食べ合わせる事によってブドウのクエン酸がエネルギー代謝を活発にし、鶏肉のタンパク質成分や亜鉛成分が強壮効果を与えてくれるために、理想的なスタミナ食となります。
■ 鶏の唐揚げとレモン、
鶏の唐揚げには、お約束というほどレモンが添えられてますよね。このレモン、酸味で揚げ物をあっさりと食べることができるというだけではなく、非常に理に適った組み合わせなのです。レモンの酸味のクエン酸には唾液や胃液の分泌を良くし、消化吸収を促し体調を整える効果があり、ビタミンCには血中コレステロールを下げる効果や抗酸化作用、抗ガン作用まであります。肝臓の働きも活発にするので、レモンは二日酔いも和らげてくれます。ですから油の多い唐揚げには持って来いの組み合わせです。唐揚げは脂質や糖質が多く、ビタミンCは血糖上昇を抑える働きもあり、糖尿病予防やダイエットにも効果的なのです。ただの添え物ではないのですよ。
■ ステーキとローズマリー、
ローズマリーは肉や魚の臭みを消し、グリル料理をより高級感あるものに仕上げてくれるだけでなく、ローズマリーに含まれるロスマリン酸やカルノソールは強力な抗酸化物質で、肉を焼いて形成される過酸化脂質などの発がん性を抑える働きがあります。お肉の下ごしらえにローズマリーを使うのはただのオシャレではありません。
■ 豚肉と玉ねぎ、
当たり前のような組み合わせですが、味だけではなく栄養学的にも相性が抜群です。玉ねぎやニラに含まれる硫化アリルは豚肉やレバーに含まれているビタミンB1の吸収を促進します。ビタミンB1はエネルギー代謝に関わる重要な栄養素で、不足すると疲れやすくなったり食欲がなくなったりと、夏バテのような症状が現れます。ビタミンB1を効率よく体に取り入れるために、玉ねぎの硫化アリルが必要なのです。ちなみにニンニクもこの硫化アリルが豊富に含まれており、豚キムチなどが疲労回復のスタミナ食と言われているのはこのためです。
■ 肉料理とパイナップル、
酢豚にパイナップルを入れるか入れないかは賛否が分かれるところですが、肉料理にパイナップルを入れるのはちゃんと意味があります。パイナップルに含まれるブロメリンという酵素はタンパク質を分解します。肉を柔らかくして消化を良くしてくれるのです。パパイヤに含まれるパパインという酵素も同じですね。パイナップルの主成分は糖質ですが、ビタミンB1、B2、Cの他に食物繊維も豊富です。またカルシウムの吸収を促進するマンガンを多く含んでおり、骨粗しょう症の予防にも効果があるとされています。酸味成分のクエン酸も豊富で、胃液の分泌を盛んにして消化を助ける働きがあります。酢豚や南国料理にパイナップルがついてくるのにはちゃんと理由があるのです。ただし、わたくし個人的には、酢豚にパイナップルはNGです。
■ 生ハムとメロン、
生ハムメロンと言えば、いまや知らない人はいないイタリアのオードブルですが、日本人なら初めて食べる時はちょっと驚きますよね。もともと生ハムの強い塩味を中和させるために、メロンやイチジクなどを添えて食べていたのが始まりです。もちろんそれだけではありません。栄養学的な意義もあります。生ハムの強い塩味は、通常のハムに比べて長時間塩漬けにしているところからきています。その塩分を体外に排出する役割を持っているのがメロンに含まれるカリウム。また、メロンにはGABAやパントテン酸といった身体にいい化学物質も含まれており、生活習慣病予防に有効です。長期熟成のおかげでアミノ酸が通常のハムより何十倍もアップしている生ハムは、うまく果物と食べ合わせることで、美容と健康に貢献してくれます。
■ 牡蠣とレモン、
皆さんご存知の通り、牡蠣は非常に栄養価の高い食材ですが、とくに注目したい栄養成分は亜鉛です。
亜鉛は男性ホルモンの合成に必須の成分で、精力増強や強壮作用を高めるには欠かせません。
成人男性の場合で亜鉛の必要量は11mgとされていますが、カキならわずか2個で補えます。
亜鉛は、さらにビタミンCと一緒に摂ることで、吸収されやすくなります。
レモンを絞ったカキは精力増強に最高の組み合わせと言えます。生の魚介類にレモンは当然、と思われていますがちゃんと理由があるのです。また牡蠣の生食は食中毒になりやすいとされていますが、レモンの酸が細菌の繁殖を抑えるため、食中毒の予防にもなります。
■ 焼き魚とレモン、
魚にはカルシウムが豊富に含まれますが、レモンのクエン酸がカルシウムの吸収を促してくれます。レモンの代わりにスダチなども同じです。焼き魚にレモンやすだちが添えられているのは生臭さをとるためだけではなく、栄養学的にもきちんとした理由があるのです。
■ アサリとレモン、
これも魚介類にはレモン、という典型です。アサリには鉄分や造血作用のあるビタミンB12が豊富に含まれており、レモンのクエン酸が鉄の吸収を促してくれます。ちなみにホウレンソウの鉄分も同様で、アサリとホウレンソウのバター焼きにレモンをかける、なんて言うのは貧血気味の方には最適な料理です。
■ トマトとアボカド、
トマトに含まれるリコピンが、がんや高血圧のリスクを減らすというのは周知の事実ですが、リコピンは脂質がないと吸収されにくいという難点があります。アボカドなど脂質の多い食品と組み合わせることで、リコピンを効率よく吸収することができます。オリーブオイルやナッツと一緒に食べるのもオーケーです。
■ ホウレンソウとゴマ、
ホウレンソウにはシュウ酸が含まれていて、食べ過ぎるとカルシウムとの比率が壊れ、結石ができやすくなります。これを防止するにはカツオブシの他、ゴマやピーナッツが最適で、マンガン・銅などの造血効果のあるミネラルと合わせて、ビタミンやたんぱく質などが重なり合って体内での効果を高めてくれます。ゴマには結石を防ぐリジンという物質が含まれているので、ホウレンソウとゴマは最適な組み合わせなのです。
■ 豆腐と漬物、
漬物は塩分が多いため、食べすぎには注意しなくてはいけませんが、豆腐に含まれるカリウムが塩分を排出してくれます。他にもトマトやスイカ、りんごなどにもカリウムが多く含まれていますが、漬物と一緒に食べるなら、豆腐がいちばん合うのではないでしょうか。
■ サンドイッチとパセリ
サンドイッチにかならず添えられてくるパセリ。色あいだけを考えた添え物だと思って残してはいませんか。ところがパセリはカルシウムや鉄分などを豊富に含む超有料食品なのです。古代西洋では薬として使われていたパセリ。飾りのように思われていますが、ビタミンAとカロチンはシソより豊富で、ビタミンCはレモンの2.5倍。葉緑素は口臭予防と抗酸化作用で発がンを抑制・解毒作用・整腸作用をもち、カルシウムや鉄分は牛乳の2倍と、多くの栄養、さらに食事の後の口臭予防にもなパセリなのです。付け合せで出てきたときには残さず食べてください。
■ 焼き肉と大根おろし
焼き肉はとても油っこいので、たくさん食べると血液がドロドロになってしまいがちですが、大根おろしは血液をサラサラにしてくれます。また、肉の焦げた部分の発がん性物質を、大根おろしのビタミンCが中和してくれる効果もあります。焼肉に焼き魚にと、大根おろしは万能食と言っていいかもしれません。

次回は最終回です。健康的に接種するための、ちょっとお奨めのメニューをご紹介しましょう。

インフルエンザ情報 2016年2月

2016年02月22日

 現在、平均して一日10人弱、インフルエンザの患者さんが受診されており、そのほとんどが「B型インフルエンザ」です。
 よく、ワクチンを注射しておけば罹っても軽くすむとお考えの方がいらっしゃいますが、これは間違いです。ワクチンというのは「オール・オア・ナッシング」つまり効いて抗体ができるかできないかのどちらかしかありません
 今年は流行の始まるのが2月に入ってからと遅かったため、昨年の10月にワクチンを注射しても、すでに効果がなくなっている人もたくさん居ます。いまの時期が警報レベルのピークだと考えてよいでしょう
 いまは簡易検査キットもありますし、それに何より特効薬が4つもあります。これは画期的なことです。簡易検査キットのなかった頃、というより15年前にはそんなものなかったのですから、検査キットができたこと自体、私などは驚きなのですが、それまで私たちはインフルエンザを問診と、そして顔つきで診断していました。「インフル顔貌」と言って、ほっぺたが赤く、眼がトロンとしている、生気がない、などのものすごく特徴的な顔つきで、これは私の世代の医者ならだいたい顔つきでインフルエンザを当てることが出来ます。もちろんハズレもありますよ。そんなもん、人間のすることですから。
 そして今でこそタミフルやラピアクタなどの特効薬があって、5日もあれば学校や職場に戻れますが、私が医者になった頃には、最低でも一週間は高熱が続いて、自分の免疫力でウイルスを退治して、そのあと消耗した体力が戻るのに3週間はかかかりました。インフルエンザはかかったら最後、あぁこの人、一ヶ月は使い物にならないな、という病気でした。
 インフルエンザの治療は時間との戦いです。少しでも早く治療を始めれば、それだけ楽に、早く治ります。「しんどくて病院に来られなかった」というのは最も避けるべきことで、「這ってでも病院に来て下さい」といつもお伝えしています。
今年のインフルエンザの特徴は、
 1.まず喉の痛みが2~3日続き、あるとき突然、熱が出る激しい頭痛どうしようもない倦怠感、などがみられたらインフルエンザの発症と考えて間違いありません。
 2.熱があまり高く出ない(平熱で元気そうなお年寄り、まさかねぇと言いながら検査したら、3秒で検査陽性を経験。ただし子供はやっぱり高熱が出ることが多い)
 3.とにかく頭痛が特徴。まずほっぺを見て赤かったら、体温を伺う前に「頭は痛いですか」と訊いています。とにかく大人も子供も、言葉にできない倦怠感、頭痛、頬が赤い、眼力がない。そういった症状を見せれば病院へお願いします。ただし、親御さん方にこれだけは注意しておきたいことがあります。
・学校で流行っているから検査してくれと言って子供さんを連れて来ないで下さい。インフルエンザを発症してないと検査しても意味はありません。潜伏期間でも検査は陰性です。何か異常を訴えてからでないと検査は陽性に出ません。そして発症後12時間を経過しないと、やはり検査は陰性です。でも、最近は発症後3時間でも判定できるキットもあります。うちは今年から全部それに変えましたが、それでも発症後3時間です。
・うつったかも知れないから薬をくれと言って来ないで下さい。今あるインフルエンザの特効薬は全て「ウイルスの増殖を止めるもの」ですので、予防的投与の価値は低いです。発症して初めて、特効薬は真価を発揮します。入試前だから予防的に飲んでおきたいというのは、お気持ちは判りますが、薬理学的にはものすごく無駄なのです。
・お姉ちゃんがインフルエンザだったからと言って弟さんを連れて来ないで下さい。検査しても陰性です。でもそれで罹ってないとは言い切れません。そして潜伏期間は感染してから3日から4日です。さらに解熱後(平熱に戻って)48時間は感染性がある、つまり他人にうつします。以上から計算すると、家に一人でもインフルエンザの患者が出れば、家族全員が一週間の警戒が必要となります。
・インフルエンザに罹っていると判って家に帰ってから、その人を隔離しないであげて下さい。無駄です。病院に来る前に家中ですでにウイルスをばら巻いています。病院で感染が確認されてからでは手遅れです。インフルエンザのウイルスはものすごく強い感染力を持っています。例えば満員電車に一人だけインフルエンザの患者さんが乗っていたとします。その患者さんが一発クシャミしただけで、その車両に乗っている人全員の服や髪の毛にウイルスが付着します。ですので、家族に一人でもインフルエンザの人が出れば、ワクチンを注射していても、だれも全く安心できません。
簡易検査キットは鼻か喉の奥に綿棒を突っ込みます。これ、本当にかなり痛いです。でもこれだけは避けて通れません。大人も子供も乳幼児も、泣いてでも我慢して下さい。「鼻に棒を突っ込まないで検査して下さい」などと、無茶は言わないで下さい。医者だってやりたくてやってる訳ではないのです。ごめんね、と心の中で謝りながら、手は無慈悲に動きます。
検査キットで陽性でなかったとしても安心はしないで下さい。まだ潜伏期間のうちに検査しただけ、ということも充分にありますし、検査キットの信頼性も85%から90%程度です。やはり患者さんの症状が、診断にいちばん重要となります。
 とにかく今年は、頭が痛いと言ったらインフルエンザを疑って下さい。でもそれだけで病院に行っても検査をしては貰えません。前述のように結果の信頼性に期待が持てませんし、鼻が痛いだけです。少なくとも3時間以上は様子を見て、どんどん症状が重く、全身の倦怠感や節々の痛みを訴えはじめるようであれば、まず間違いありません。大急ぎで医療機関へ。それ以上待つのは患者さんが辛いだけですから。(2016.02.18)

世間でいわれている「良くない食べ合わせ」<3>

2016年01月19日

では今度は逆に、「良い食べ合わせ」をご紹介しましょう。実はこれも、あまりにも日常に溶け込み過ぎていて、その意味を知って驚くこともあれば、知らなかったけど、これはこれから使えそうだな、というものまで様々です。

■老化防止と疲労回復に「とんかつとキャベツ」
とんかつ定食といえば山盛りの千切りキャベツが定番です。油っぽいとんかつを食べた後、口をさっぱりとリフレッシュしてくれるキャベツですが、この食べ合わせは老化防止や疲労回復に効きます。キャベツは食物繊維を多く含むため、とんかつの油分の吸収を抑制し、その毒を取り除いてくれます。また、キャベツには消化、吸収を助けてくれる働きがあり、キャベツ特有の成分ビタミンU(キャべジン)にも胃酸過多によるむかつきを抑え胃腸を保護して消化・吸収を助ける作用があります。さらにキャベツは、食物繊維とインドトール化合物が、抗酸化作用と免疫力強化作用をもち、発ガンを抑制する効果の高い野菜の1つとされています。
■胃もたれを治し食欲増進「カレーとらっきょう」
カレーにらっきょうという、よく見られる食べあわせは、箸休めになる以外にも栄養的にもきちんとした意味があります。脂っこいカレーでもたれがちな胃を保護し、食欲を増進したりしてくれるのが、らっきょうの『硫化アリル』です。硫化アリルにはビタミンB1の吸収を高める働きもあり、ビタミンB1が豊富な豚肉のポークカレーだと、夏バテや疲労回復にも効果のある、さらに良い食べ合わせになります。もともとインドではカレーの付け合せにピクルスが使われますが、日本では手に入りやすい甘酢らっきょうになったようです。

■手軽な栄養バランス食「納豆にネギ」
納豆に刻んだネギを入れて食べる、納豆と刻んだネギを一緒に卵焼きにするなどの食べあわせは栄養学的には最高です。納豆菌は腸内細菌を整えるためにはヨーグルトのビフィズス菌以上に有効という説が有力になってきていますし、また納豆にはビタミンB群が豊富で、とくにビタミンB2は大豆の時の約4倍、ビタミンB6は約10倍。さらにネギに含まれるアリシンがビタミンB1の吸収率を高めてくれます。納豆の粘り成分であるナットウキナーゼには血栓を溶かす働きがあり、ネギには血栓予防の効果があるので、血液サラサラにダブルの効果が期待できます。ただし納豆にはビタミンCが含まれていませんが、ネギにビタミンCが含まれていますので、納豆とネギの組み合わせは優れた栄養バランス食になります。

■疲労回復の相乗効果「ニラとレバー」 
スタミナ定食の定番レバニラ炒めですが、ニラの役割は臭みの軽減だけではありません。レバーにはビタミンB群が豊富に含まれていますが、ニラの匂い成分である硫化アリル(アリシン)がビタミンB1の吸収を高めてくれます。ビタミンB1は余分に摂ると排出されてしまいますが、アリシンはビタミンB1と結合し、体内に長くとどまり疲労回復に作用してくれます。レバーとニラを一緒に食べれば、疲労回復に相乗効果があるのです。

■悪酔いも二日酔いにもいい「キムチにはビール」
辛いキムチはお酒のおつまみによく合いますし、寒い冬にはキムチ鍋をつつきながら一杯も良いですね。キムチに含まれるナイアシンは、アルコールや二日酔いの原因であるアセトアルデヒドを分解してくれます。肝臓の機能を高めて解毒作用を強化してくれるタウリンも含まれており、キムチとお酒は、二日酔い予防の良い組み合わせです。キムチには脂肪の代謝を良くするナイアシン(ビタミンB2)や脂肪燃焼作用のカプサイシン(辛味成分)も含まれます。

■酒好きの人に朗報。タンニンがアルコールを分解「酒には柿」
甘柿にも含まれている柿の渋み成分「タンニン」はアルコールを分解してくれる酵素です。二日酔いの原因となるアセトアルデヒドは柿の果糖が分解します。また、利尿作用のあるカリウムも豊富なため、二日酔いには柿が有効です。飲酒前に食べておくと悪酔いを防ぐ効果もあります。また柿にはビタミンCも豊富に含まれ、肝臓の働きを助けてくれるので、お酒を飲む人にはすすんで食べてほしい果物です。ただし柿は消化が悪く、胃腸を冷やす作用もあり、さらにタンニンには鉄の吸収を阻害する作用があるので、貧血の薬とは併用できません。

■カルシウムの吸収率アップ「豆腐にかつお節」
豆腐にかつお節の組み合わせは、旨味をプラスする以外にも嬉しい効果があります。良質のタンパク質やカルシウムが豊富に含まれている豆腐ですが、必須アミノ酸のメチオニンとリジンが不足しています。不足しているメチオニンとリジンをかつお節が補うことで、豆腐は卵に負けない完璧なたんぱく質補給となります。かつお節にはビタミンDも多く含まれており、豆腐だけ食べるときよりもかつお節をかけるとカルシウムが20倍も吸収されやすくなります。かつお節は単なる添え物ではないのです。

■発がん物質の除去作用「サンマに大根おろし」
生活習慣病の予防効果が高く栄養豊富なサンマ。昔おコゲを食べると発がん性があると言われましたが、実際には通常私たちが食べる量でがんは誘発されません。しかしわずかであってもおコゲに含まれる発がん物質を大根おろしのビタミンCや酵素群がこれを除去してくれます。サンマとお漬け物がニトロソアミンという発がん性物質を作ると前述しましたが、大根おろしはニトロソアミンの除去作用もあります。余談ですが大根は皮の近くにビタミンCが多く含まれているので、皮つきのままおろして下さい

次回は→
まだまだありますよ。えっ、そんな料理あるの?

世間でいわれている「良くない食べ合わせ」<2>

2015年12月18日

前回の『巷で「悪い」とされている食べ合わせについて考証します。』の続きです。

9.ドジョウに山芋…
これも医学的根拠は見つからず、「悪い食べ合わせ」とは言えません。単に食感が悪いというか、一緒に食べても美味しくないと言うだけだと思われます。
10.鮎にごぼう…
これも医学的検証は出来ませんでしたが、よく考えると、両者の旬が大きくズレていると言うことで、単にそれだけのことではないでしょうか。
11.タコにワラビ…
ワラビの過剰摂取によるワラビ中毒を起こす危険性があります。またタコの吸盤には寄生虫が多く、生食でも吸盤だけは湯通しした方が良いと言うのは、料理人の間では常識です。そういう意味で「悪い食べ合わせ」です。ワラビはたくさん食べると毒性があるので、要注意食材です。
12.クルミに酒…
クルミは血圧上昇効果があるので、お酒と一緒に摂取すると高血圧性脳症や、最悪の場合、クモ膜下出血の危険性もあります。よってこれは「悪い食べ合わせ」に入ると思います。ウイスキーの水割りにミックスナッツ、というのはよくある組み合わせですが、気をつけて下さい。
13. トコロテンと生卵…
消化に悪いもの同士の組み合わせですので「悪い食べ合わせ」、これもやはり胃腸の弱い人や下痢気味の人は要注意です。
14. サンマと漬け物…
発がん性物質を作り出してしまう「怖い」食い合わせです。
サンマを焼くとタンパク質が変化して「ジメチルアミン」という物質ができます。
そして、漬物は野菜に含まれる硝酸塩が発酵の過程で「亜硝酸塩」に変化します。
この「ジメチルアミン」と「亜硝酸塩」が融合すると
「ニトロソアミン」という発がん性物質が生成されるという、これはちょっと怖い話です。ですが、かつて東北地方に特に胃がんが多いと言う疫学調査がありましたが、その論文でも亜硝酸塩が問題視されましたほどの、曰く付きの食べ合わせです。まちがいなく「悪い食べ合わせ」です。
15. ほうれん草とゆで卵…
ゆで卵の硫黄分がほうれん草の鉄分の吸収を妨げます。ほうれん草には「シュウ酸」と言う物質が多く含まれ、これを過剰に取ると胆嚢結石や腎臓結石の元になります。ホウレンソウを食べる時は茹でてアクを取るか、シラスやカツオブシなどのカルシウムを多く含む物質と一緒に食べ、「シュウ酸カルシウム」にして排泄してしまうのが正解です。昔の人はちゃんと判っていたのですね。「悪い食べ合わせ」です。
16. ドリアンと酒…
東南アジアでは古くから言い伝えられています。ドリアンの酵素とエタノールとの反応から死に到る危険性もあるとされていますが、実際にはドリアンを沢山食べて、同時にアルコールを摂ると急速に醗酵が進み、胃が膨れ上がるようです。少量のドリアンとアルコールならば、膨満感、そして、気分が悪くなったりする程度ですみますが、大量のドリアンをたべた場合は吐いたり寝込んだりすることがあります。死亡というのは大げさで、少量のドリアンとアルコールで膨満感や気分が悪くなる程度。大量のドリアンとアルコールで嘔吐や寝込んだりする程度らしいです。「悪い食べ合わせ」です。
17. スイカとビール…
両方ともほとんど水分ですが、利尿作用があり、ビールの摂取が進みすぎ、急性アルコール中毒や熱中症を引き起こす可能性があるります。また、水分を摂っているつもりでも気づかないうちに脱水症状に陥っていて、水泳前や入浴前では水死の危険性もあるので「悪い食べ合わせ」です。
18. ナスの漬け物とそば…
ナスの漬け物は体の熱を冷ます作用があり、そばには胃を冷やす作用があります。冷たいまま食べ合わせるとより体を冷やすことになり、下痢をしたり手足が冷えてしまいますので「悪い食べ合わせ」です。ただし加熱すればその作用は緩和されるので、温かい汁そばで。体を温める作用のあるネギや七味を加えると大丈夫ですが、「悪い食べ合わせ」とします。
19. お酒とからし…
酒とともに、からし(マスタード)などの辛いものも血行を促すため、おでんに和辛子をたっぷり付けて熱燗で一杯…は、実は皮膚にかゆみが出てしまう可能性があります。この食べ合わせは、高血圧、糖尿病、高コレステロールなどの生活習慣病を引き起こす可能性もあるのでご注意を。この2つを同時に摂るときは、きゅうりやトマト、セロリなど体を冷やす作用のある食べ物を一緒に摂りましょう。
20. シラスと大根…
よく食べる一品ですが「悪い食べ合わせ」です。シラスに含まれる必須アミノ酸リジンの吸収を、大根が持つ抗体によって阻害してしまいます。リジンは体内で作ることができず、食べ物から摂取する必要があるアミノ酸で、免疫力アップや抗ストレス効果があります。ダイコンとシラス干しには、酢を少量かければ栄養的に問題なく食べられます。
21. わかめとネギ…
ちょっと驚かれると思いますが、実は「悪い食べ合わせ」です。ワカメに含まれるカルシウムの吸収を、ネギに含まれるリンが阻害してしまいます。一緒に食べたからといってそれほど深刻な問題ではありませんが、効率の良い栄養吸収を考えるのであれば良くない食べ合わせです。
22. ホウレンソウとベーコン…
これもよく見る一品ですが、ホウレンソウに含まれる硝酸が体内では亜硝酸に変化し、それがベーコンに含まれるタンパク質の分解物と反応して、発ガン性物質が生成される恐れがあります。さらにベーコンに含まれるリン酸が、ホウレンソウに含まれる鉄分やカルシウムの吸収を妨げてしまう問題もありますので「悪い食べ合わせ」です。ビタミンと一緒に摂ることで、亜硝酸に変化することを防げます。またベーコンを炒める前に茹でておけば、鉄分やカルシウムの吸収を阻害することもなくなります。
23. レバーとみょうが…
あまり一緒に食べることはないと思いますが、むかしどこかの焼肉屋さんで、生レバーを注文したら刻んだミョウガが薬味に付いてきたことがあります。レバーの臭みを感じさせないようにと考えたのでしょうが、レバーとミョウガを食い合わせると、ミョウガの苦味物質が胃腸の働きを抑えるため、栄養分の吸収を低減してしまいます。よって「悪い食べ合わせ」です。胃腸の働きを高める作用のあるショウガを加えると、栄養分の吸収率は向上します。
24. ヒジキと牡蠣…
これもあまり一緒に食卓に並ぶことは少ないかもしれませんが、ヒジキにはタンニンが多く含まれています。果物の柿にもタンニンが多く含まれ、牡蠣をはじめとする貝類の持っている鉄分とではお互いの効果を相殺してしまいます。牡蠣に多く含まれる亜鉛は、タンパク質の合成に必要なミネラルですが、ヒジキが亜鉛の吸収を妨げます。亜鉛は体内では微量な元素ですが、亜鉛不足は味覚障害、口内炎、皮膚障害などを引き起こします。どちらも同じ海の幸ですが、一緒に食べるとよろしくありません。
こうしていろいろな「言い伝え」を検証していくと、二つの結論がみえてきます。まず、昔の人の言うことは、それが経験的なものから導かれたことであっても充分に現代医学の理論にかなっているということ。もう一つは、ごくごく当たり前に食べているものでも、医学的見地から考えると必ずしも正しくないということ。トマトにキュウリとか、シラス干しに大根とか、ワカメにネギとか、漠然と身体に良さそうだと思って、普通に食べてますもんね。ちょっと恐ろしくなります。

次回は、逆に、「良い食べ合わせ」をご紹介しましょう。

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