その症状、原因は「ヒノキ花粉」かも!
2017/04/24
このところ、うちのクリニックを受診されるのは、花粉症の患者さんばっかりです。でも「花粉症です」と言って来られる方は非常に少ないんですね。
訴える症状は
1.咳が止まらない
2.喉が痛い
3.昨夜38度以上の熱が出たけど、今朝はもう下がった
4.花粉症でもないのに、ときどきクシャミが止まらなくなる
5.朝になると目ヤニがこびりついてる
…などなど。実はこれ、原因は全て一つ、ヒノキの花粉です。
いま、ヒノキの花粉がエラい事になっています。夕方のテレビの番組で気象予報士の方が言ってましたが、ちょうど今、4月20日前後ですが、1平方センチメートルあたり100個の割合でヒノキ花粉が飛散しています。キャスターの方が、それって判りやすく言うと、瞳の黒目の部分に100個のヒノキ花粉がへばりついてるんですよね、想像しただけで目が痒くなってきますね、と突っ込んでいましたが、笑い事ではありません。花粉症の人も、幸いな事にそうでない人も、今年のヒノキ花粉に関していえば、花粉症で毎年つらい思いをしている人だけではなく、自分はそうではないと思っている人も、今年は多大な悪影響を受けているのです。
春に飛び交う花粉はスギとヒノキ、これが代表格です。日本は縦に長い国ですから、地域によっても差があります。近畿地方に限っていうと、スギとヒノキの他に、ハンノキ、ポプラ、ヤシャブシ、イチョウ、マツなど、もういっぱいありますけど、代表格はスギとヒノキ。そしてこのスギとヒノキ、面白いことに、年ごとで勢力が入れ替わっているのです。スギ花粉がたくさん飛んだら、翌年はヒノキ、また次の年はスギ、というふうに。
そして今年はヒノキの当たり年。いえ、大当たり年と言っていいでしょう。先月の「Dr’s Voice」にも書かせて頂きましたが、実は昨年の花粉飛散量は例年の3割程度と、非常に少なかったのです。今年は例年の1.7倍、少なかった昨年に比べると、なんと7.3倍の花粉飛散量が見込まれていました。しかし、フタを開けてみると、スギはたいしたことなかったのですが、4月14日の金曜日をピークにヒノキの大飛散がはじまりました。
これだけ飛べば、ヒノキ花粉に対するアレルギーを持っていない人でも、さすがに影響が出るというほどの飛散量です。もともと花粉症はアレルギー反応。いうなれば「化学反応」です。ところがこれだけヒノキ花粉が飛ぶと、目から鼻腔から気管支まで、びっしりと花粉がまとわりつきます。なにせ1平方センチあたり100個ですからね。こうなると、ヒノキアレルギーを持っていない人にでも「物理的影響」が及びます。
一日中外にいてヒノキ花粉をたっぷり鼻の穴から副鼻腔まで吸い込んで、そのまま夜に寝ますと、大量のヒノキ花粉は多少なりとも鼻を詰まらせます。鼻が詰まると口を開けて寝る。口が開いてると喉が乾燥する、乾燥は炎症を呼び起こす。喉が痛いと言って医者に行く。気管支にたっぷりヒノキ花粉を吸い込んでいると、アレルギー反応こそ起こらないけど、気管支の繊毛が寝ている間にそれを外に出そうと過剰に働いて、ひどい咳がでる。
ヒノキのアレルギーは無いけど、あまりに多くのヒノキ花粉が、たまに他の免疫反応のスイッチを入れてしまう。クシャミの連発です。目だって、結膜にいっぱい粉がついてたら、寝ている間にそれが涙と混じってネチャネチャになって、朝になったら目が開かないほど目ヤニがついてる。
自分はヒノキのアレルギーはないと思っている人ほど、世の中こんなにヒノキ花粉がエライことになってても関心が無い。でも確実に身体のいたるところにヒノキ花粉がビッシリとまとわりついている。それが身体に起こす様々な悪影響が、まさかヒノキ花粉のせいだなんて考えもしない。で、いろいろな訴えをたずさえて医療機関の門を叩く。
こんなことにならないためには、とにかく毎晩風呂に入る。これが一番です。髪の毛から身体までキレイに洗い流す、これはセッケンを使わなくても良いくらいです。でもここからが大切。特に目と鼻の穴も、お湯でしっかり洗う。お風呂のお湯は目に入ったり鼻に吸い込むとツーンと来ますよね。ですが、ちょっと水を鼻から吸い込んですぐにチーンとかめば、そんなに痛くありません。それを何度も繰り返す。目だって流れる水を手にすくって、こすらずにパシャパシャと目についた花粉を洗い流す感じです。
それでもあのツーンがイヤという人には、ドラッグストアに行けば生理食塩水の洗眼液や、鼻に吸い込むスプレー式の鼻洗い液が売っています。これだとツーンはありません。たっぷり使ってその日についたヒノキ花粉はその日のうちに洗い流しておきましょう。そうすれば、咳や熱が出たり、喉が痛かったりと、行かなくても良いことで病院に行く必要は格段に減ります。まぁそれはそれで、うちとしては売り上げが減ってしまうのですけど、やっぱり無駄なことで医者に行かなくても良いとは思うのですよ、私も。