5月中旬のインフルエンザ
2016/05/17
嫌な予感が当たらなければいいのですが…。
本日5月中旬になって、インフルエンザA型の患者さんが一日平均2人来られるようになりました。最初はウソぉッと思いましたが、よく考えれば、答えは簡単です。これはもう一波、流行期があるのではないかと危惧しています。2009年に流行して「新型豚インフルエンザ」と言われて騒がれたアレです。「インフルエンザ(H1N1)09pdm」という正式名称がついて、今では季節型インフルエンザの仲間入りしています。
よく思い出して下さい。最初に神戸で発見されて大騒ぎになり、日本中で大騒動になったのは、2009年のちょうどゴールデンウィーク明けでしたよね。要するにこのA型インフルエンザ(H1N1)2009pdm・ウイルスは、季節を問わず一年を通じて流行するということです。
もう一つ、これから流行しそうな理由があります。インフルエンザ・ワクチンの有効期間はだいたい4カ月。昨年末にワクチンを打った、とかいうのは全く関係ありません。
しかもこのタイプのウイルス、おそらく2015年から2016年の冬シーズンには、あまり流行らなかったと思われます。今年前半に出たA型インフルエンザは、おそらくH3N2、いわゆる香港型が大半だったと想像しています。それが何を意味するかというと、いま、H1N1/09pdmにかかると症状が激しいということです。一昨年の大流行したシーズンは、ほとんどのA型がH3N2の香港型でしたから今回のH1N1/09pdmしばらく流行してなかったので、抗体をもってる人が減っている、もしくはもっていても、抗体価が低くなっていると云えます。
私のクリニックではインフルエンザ治療の第一選択薬は「ラピアクタ」という点滴です。これは一回点滴すれば、およそ24時間後には症状が劇的に警戒し、あとは何も飲み薬や吸入をしなくても安静にしていればいいという、非常に優れものでして、ただ、点滴はイヤ、針を刺されるのがイヤという人や、お子さんの場合には、それなだめすかして点滴させてもらうのですが、実際に、その夜は体の中でウイルスと薬が闘うわけですので、けっこう高熱が出て倦怠感も強いのですが、まず24時間経てば、急激に症状が治まりますし、子供さんの場合はもっと効きが良くて、次の朝にはケロッとしていることが大半です。
治っても発症から5日間は学校に行けませんので、それはそれで退屈だとこぼすお子さんも多いのですが、でも早く治ったほうが、しんどい思いしなくていいジャンと言って無理矢理納得してもらってますが、それで結構、うちのクリニックには遠方からでも、ここは子供でも点滴してくれるって聴いて来ました、なんて言う親御さんもたくさんいらして、ママ友のライン・コミュニケーションにはときどき驚かされるのですが、さて実はここまでは前フリなんですね。
なんと今年のH1N1/09pdmは、ラピアクタを一回点滴しても一日で治らないことが多いのです。ラピアクタは24時間経過して症状に改善が見られないときには例外的に2回目の点滴をしてもいいのですが、実際にそうそう2回点滴するインフルエンザ患者さんは居ません。
ところが、このところ、おそらく「H1N1/09pdm」と思われるA型インフルエンザの患者さんは、ほぼ皆さん、ラピアクタを打っても翌日、あまり良くならないと言って、2回めのラピアクタの点滴を受けにこられるのです。それでまぁさすがに、その翌日か翌々日にはほぼ症状も治まって、学校、仕事にはまだ行けないのか?…ってことになるのですが。
インフルエンザは真冬に流行するものだと思っている方、大勢いらっしゃいます。実際、4年前まではそうでした。しかも困ったことに、まだそう思い続けているドクター達も驚くほどたくさんいます。既成概念と言うか、不勉強というか、今夏も他の医療機関で夏カゼと診断されて、それでも治らず一週間以上も高熱が続き、うちに来た時にはインフルエンザ肺炎まで併発している方が来られました。もう大変でしたが点滴のインフルエンザ特効薬と抗生物質の併用で、ようやく完治しました。
いまインフルエンザが流行っているというのに、それを把握してない開業医が多い!尻拭いさせられるこっちは大変です。
「インフルエンザは冬の病気」というのは、もう過去の話です。現に少し前の夏、沖縄で毎週1000人単位でインフルエンザの患者さんが発病しました。その当時のインフルエンザは典型的な症状がないのも厄介で、高熱が出ない場合も多く、あえていうなら「頭痛」が共通の症状と言えるくらいでしたが、今年はちょっと様相が違います。けっこう熱も出ますし、倦怠感、疲労感などが強いです。
私は前からずっと言っていることですが、もはやインフルエンザは冬の季節病ではなくなりました。どうか皆さん、いつもと違う妙な体調や、何ともいえない疲労感を感じたら、すぐに医療機関に駆け込んで下さい。それも、ちゃんと感染症の流行の現状を把握している先生の元に。おそらく新型インフルエンザですから!
これまでの常識は捨てて下さい。いつもと違う妙な体調や、言葉に表せない何ともいえない疲労感、カゼだと思うけど何かちょっと違う気がする。そして特に頭痛を感じたら、病院に行って下さい。