医療法人社団 甲南回生
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世間でいわれている「良くない食べ合わせ」2

世間でいわれている「良くない食べ合わせ」2

2015/12/18

前回の『巷で「悪い」とされている食べ合わせについて考証します。』の続きです。

9.ドジョウに山芋…
これも医学的根拠は見つからず、「悪い食べ合わせ」とは言えません。単に食感が悪いというか、一緒に食べても美味しくないと言うだけだと思われます。

10.鮎にごぼう…
これも医学的検証は出来ませんでしたが、よく考えると、両者の旬が大きくズレていると言うことで、単にそれだけのことではないでしょうか。

11.タコにワラビ…
ワラビの過剰摂取によるワラビ中毒を起こす危険性があります。またタコの吸盤には寄生虫が多く、生食でも吸盤だけは湯通しした方が良いと言うのは、料理人の間では常識です。そういう意味で「悪い食べ合わせ」です。ワラビはたくさん食べると毒性があるので、要注意食材です。

12.クルミに酒…
クルミは血圧上昇効果があるので、お酒と一緒に摂取すると高血圧性脳症や、最悪の場合、クモ膜下出血の危険性もあります。よってこれは「悪い食べ合わせ」に入ると思います。ウイスキーの水割りにミックスナッツ、というのはよくある組み合わせですが、気をつけて下さい。

13. トコロテンと生卵…
消化に悪いもの同士の組み合わせですので「悪い食べ合わせ」、これもやはり胃腸の弱い人や下痢気味の人は要注意です。

14. サンマと漬け物…
発がん性物質を作り出してしまう「怖い」食い合わせです。
サンマを焼くとタンパク質が変化して「ジメチルアミン」という物質ができます。
そして、漬物は野菜に含まれる硝酸塩が発酵の過程で「亜硝酸塩」に変化します。
この「ジメチルアミン」と「亜硝酸塩」が融合すると
「ニトロソアミン」という発がん性物質が生成されるという、これはちょっと怖い話です。ですが、かつて東北地方に特に胃がんが多いと言う疫学調査がありましたが、その論文でも亜硝酸塩が問題視されましたほどの、曰く付きの食べ合わせです。まちがいなく「悪い食べ合わせ」です。

15. ほうれん草とゆで卵…
ゆで卵の硫黄分がほうれん草の鉄分の吸収を妨げます。ほうれん草には「シュウ酸」と言う物質が多く含まれ、これを過剰に取ると胆嚢結石や腎臓結石の元になります。ホウレンソウを食べる時は茹でてアクを取るか、シラスやカツオブシなどのカルシウムを多く含む物質と一緒に食べ、「シュウ酸カルシウム」にして排泄してしまうのが正解です。昔の人はちゃんと判っていたのですね。「悪い食べ合わせ」です。

16. ドリアンと酒…
東南アジアでは古くから言い伝えられています。ドリアンの酵素とエタノールとの反応から死に到る危険性もあるとされていますが、実際にはドリアンを沢山食べて、同時にアルコールを摂ると急速に醗酵が進み、胃が膨れ上がるようです。少量のドリアンとアルコールならば、膨満感、そして、気分が悪くなったりする程度ですみますが、大量のドリアンをたべた場合は吐いたり寝込んだりすることがあります。死亡というのは大げさで、少量のドリアンとアルコールで膨満感や気分が悪くなる程度。大量のドリアンとアルコールで嘔吐や寝込んだりする程度らしいです。「悪い食べ合わせ」です。

17. スイカとビール…
両方ともほとんど水分ですが、利尿作用があり、ビールの摂取が進みすぎ、急性アルコール中毒や熱中症を引き起こす可能性があるります。また、水分を摂っているつもりでも気づかないうちに脱水症状に陥っていて、水泳前や入浴前では水死の危険性もあるので「悪い食べ合わせ」です。

18. ナスの漬け物とそば…
ナスの漬け物は体の熱を冷ます作用があり、そばには胃を冷やす作用があります。冷たいまま食べ合わせるとより体を冷やすことになり、下痢をしたり手足が冷えてしまいますので「悪い食べ合わせ」です。ただし加熱すればその作用は緩和されるので、温かい汁そばで。体を温める作用のあるネギや七味を加えると大丈夫ですが、「悪い食べ合わせ」とします。

19. お酒とからし…
酒とともに、からし(マスタード)などの辛いものも血行を促すため、おでんに和辛子をたっぷり付けて熱燗で一杯…は、実は皮膚にかゆみが出てしまう可能性があります。この食べ合わせは、高血圧、糖尿病、高コレステロールなどの生活習慣病を引き起こす可能性もあるのでご注意を。この2つを同時に摂るときは、きゅうりやトマト、セロリなど体を冷やす作用のある食べ物を一緒に摂りましょう。

20. シラスと大根…
よく食べる一品ですが「悪い食べ合わせ」です。シラスに含まれる必須アミノ酸リジンの吸収を、大根が持つ抗体によって阻害してしまいます。リジンは体内で作ることができず、食べ物から摂取する必要があるアミノ酸で、免疫力アップや抗ストレス効果があります。ダイコンとシラス干しには、酢を少量かければ栄養的に問題なく食べられます。

21. わかめとネギ…
ちょっと驚かれると思いますが、実は「悪い食べ合わせ」です。ワカメに含まれるカルシウムの吸収を、ネギに含まれるリンが阻害してしまいます。一緒に食べたからといってそれほど深刻な問題ではありませんが、効率の良い栄養吸収を考えるのであれば良くない食べ合わせです。

22. ホウレンソウとベーコン…
これもよく見る一品ですが、ホウレンソウに含まれる硝酸が体内では亜硝酸に変化し、それがベーコンに含まれるタンパク質の分解物と反応して、発ガン性物質が生成される恐れがあります。さらにベーコンに含まれるリン酸が、ホウレンソウに含まれる鉄分やカルシウムの吸収を妨げてしまう問題もありますので「悪い食べ合わせ」です。ビタミンと一緒に摂ることで、亜硝酸に変化することを防げます。またベーコンを炒める前に茹でておけば、鉄分やカルシウムの吸収を阻害することもなくなります。

23. レバーとみょうが…
あまり一緒に食べることはないと思いますが、むかしどこかの焼肉屋さんで、生レバーを注文したら刻んだミョウガが薬味に付いてきたことがあります。レバーの臭みを感じさせないようにと考えたのでしょうが、レバーとミョウガを食い合わせると、ミョウガの苦味物質が胃腸の働きを抑えるため、栄養分の吸収を低減してしまいます。よって「悪い食べ合わせ」です。胃腸の働きを高める作用のあるショウガを加えると、栄養分の吸収率は向上します。

24. ヒジキと牡蠣…
これもあまり一緒に食卓に並ぶことは少ないかもしれませんが、ヒジキにはタンニンが多く含まれています。果物の柿にもタンニンが多く含まれ、牡蠣をはじめとする貝類の持っている鉄分とではお互いの効果を相殺してしまいます。牡蠣に多く含まれる亜鉛は、タンパク質の合成に必要なミネラルですが、ヒジキが亜鉛の吸収を妨げます。亜鉛は体内では微量な元素ですが、亜鉛不足は味覚障害、口内炎、皮膚障害などを引き起こします。どちらも同じ海の幸ですが、一緒に食べるとよろしくありません。

こうしていろいろな「言い伝え」を検証していくと、二つの結論がみえてきます。まず、昔の人の言うことは、それが経験的なものから導かれたことであっても充分に現代医学の理論にかなっているということ。もう一つは、ごくごく当たり前に食べているものでも、医学的見地から考えると必ずしも正しくないということ。トマトにキュウリとか、シラス干しに大根とか、ワカメにネギとか、漠然と身体に良さそうだと思って、普通に食べてますもんね。ちょっと恐ろしくなります。

次回は、逆に、「良い食べ合わせ」をご紹介しましょう。

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